世界中で気候大異変
地球規模で気候の大異変が起きている。一昨年、米国ニューオリンズを中心に“温暖化難民”と呼ばれる100万人を超える被害者を出したハリケーン「カトリーナ」(最大風速80m)が記憶に新しい。以前から「温暖化が進むほど台風やハリケーンの力は激化する」(気象観測専門家)と予測されていた。 昨年の冬はヨーロッパ各国で大寒波が猛威をふるった。ロシア・ヤクーツクでは零下70度を超える記録的な寒波が続き、フランス・パリでは93年ぶりの積雪量を記録した。ドイツ西部でも記録的な大雪により約25万世帯で停電が続いたり、低温と積雪で列車が脱線。ベルギー、ハンガリーなどヨーロッパ各国でホームレスの凍死が増出。山間部の被害は予想をはるかに超えているという。
融けゆく北極の氷、CO2濃度が過去最高に!
日本でも、日本海側や東北地方などが強烈な寒波と記録的な積雪に見舞われた。これらは北極圏からもたらされたものだ。米航空宇宙局(NASA)の人工衛星からの解析によれば、北極圏では昨夏、地球全体の平均気温が上昇したことによる様々な現象が、過去25年間の観測の中で最も強く現れたという。 北極の海氷が融けたことで冷塊水が水蒸気となって大量に上昇し、ロシア・ヤクーツクでは平均気温が急上昇。乱気流が発生したり、永久凍土が融けて急激に減少したという。シベリアではここ数年間で、森林伐採により毎年800万ヘクタールの森林が消えたため永久凍土が溶け、火災も頻発しているという。 「これらは北極上空で自然に起きる北極振動と呼ばれる気圧変動の影響とも見られるが、明らかに人間活動によるCO2濃度・地球温暖化率の増加が原因であると見極めをつける研究結果が出るかもしれない」(国立極地研究所・藤井所長)。インドでも既に大寒波が襲来している。気候変動の影響は、エネルギー問題、食糧問題も含め、経済的にも日本を始めとする世界各国に大被害をもたらしている。 南極で採取した氷柱を、ベルリン大学などのチームが65万年前まで遡って(深さ3200mまで氷柱を掘削採取気泡調査)CO2濃度を調べた結果、現在のCO2濃度は65万年中過去最高だという(05年11月25日、米科学誌サイエンス発表)。
世界危機の鍵を握る人口大国…中国、インド
地球環境問題に警鐘を乱打し続けているレスター・ブラウン氏は、「強大な人口を抱え、さらに増加を続けている中国、インドの社会変革や構造、その動向が、大きな危機を急速に生むことになろう」(05年11月21日)と語っている。 「中国は、米国と比べて2倍の穀物と2.5倍の鉄鋼を消費する大国。年9%程度の経済成長を続けると、2031年には紙の消費量は米国の2倍になる。他国の消費が減らなければ世界の森林が激減する」 すでに「1分間にサッカー場1面の広さの森が消滅している」(国連環境計画)。 「米国と同様、4人に3台の車を持つようになると中国だけで11億台の車を所有することになり、その車を駐車するには中国の水田全てを舗装しなければならない。化石燃料に頼り資源を使い捨てる米国流の社会構造を続けることは、エネルギーの点を考えただけでも世界を大混乱に陥れる。食糧問題を考えても世界人口の半分を中国、インドなどが占めるようになれば、いずれにせよ地球がもう一つ必要になるほどの大惨事が起きる」 経済の仕組みも生き残りを賭けて、いたる所で資源の奪い合いや殺し合い、紛争、戦争が続発。それに伴い弱者の間では大量の飢餓や病気が発生するだろう。 これらの危機を想像してみた時、穀物自給率29%、食糧自給率39%の日本が今後も食糧のほとんどを輸入に頼っていては、座して死を迎えるに等しいことを理解しなければならない。多くの国民が飢えに苦しんだ60年前の戦後の時代でさえ、70%の自給率があったことを忘れてはならない。
「成長の限界」を超え世界は大きな転換点に突入
「ローマクラブによる『成長の限界』の考えが発表されて40年。資源は、自然界の水にせよ鉱物にせよ無限ではなく、廃棄物を含めて右肩上がりの見通しの『経済』に“負”として大きな影響を及ぼす。 私たちは『持続可能な社会』という言葉をつくり、自然には充分な回復力があって、特に先進国の努力によって人間社会も『経済』を成長させながらやっていけるという世界観、人生観をもって社会を設計し、便利・快適な理想郷に向かった。 それが、今ここにきて限界と矛盾が明確に見えてきている。今の日本でも、少子高齢化社会の到来こそが一大事のようにいわれるが、そんな話ではもはやおさまらないところまで来ている」(総合研究大学院大学・長谷川教授、2006年1月16日付日本経済新聞より) 実は超大国アメリカが抱える巨大なアフガン・イラク戦の膨大な戦費、拡大する一方の財政赤字、続発する自然災害の復興費、原油価格や医療費の高騰等々、総合的な経済の「負」の重なりからいって、アメリカ合衆国がまさにタイタニック号のように傾き始めるのは、もはやそう遠くない時期にまで来たといわれている。 それに連動して中国も人間・経済中心主義、急伸を続ける高度成長路線等々、地政学的リスクやカントリーリスクの分析内容から見て、崩壊の可能性が現実問題として深刻に語られ始めてきた。想像を絶するような大国の地鳴りが聞こえてくるようだ。 とにかくこのままいけば、生活経済のほとんどが輸出・輸入で成り立っている日本も当然、甚大な影響を受けることは間違いない。もはや大きな転換年に入ったという自覚を持って、政府も私たち国民も真剣に内実の努力や備えをしなければ、日本の「明日」はないように思えてならない。
“公”の概念を失った日本
戦後61年目が始まった。団塊の世代がこの4月から次々と肩たたき退職や定年を迎える。「団塊の世代は非常に恵まれた世代で、“個の価値”が認められた初めての日本人世代。私生活主義で他人に干渉したくないし、されたくもない。決定的不条理に出会った経験もなく、与えられた民主主義のもとで経済・産業など働く場所にも“個の自由”があり、一応恵まれてきた。団塊の世代が今後“老後・余生”をどうするか、どうなるかによって日本社会のあり方が変わる」(日本総合研究所・寺島理事長・昭和22年生まれ)。 考えてみれば、今の国家のあり方や会社のあり方は、“個”を中心とした効率、採算の最重視を追及してきた。東京一極集中とか都市化をベストとし、価値観の多くがその延長線上にあるからだろうか。そのことによって見失ってきたものは多いように思う。 「その典型が官から民の“公の概念”があることを忘れてきたことです」(寺島氏談)。「国家の改革=官から民へ」とはいえ、何でも民ではなく、官の役割をしっかり確保し、民は民で“公”の社会貢献を行うことも重要ではないか。日本企業は「社会的責任」や社会を見つめる眼を持っていたし、ある種の哲学のように社会への「感謝」や社是、社訓等を掲げていた。リーダーたちは会社や組織のことだけでなく、国の未来像をも語ってきた。 「多くの人たちが一人ひとり生きがいを感じ、心の豊かさを求め、米国流の大変なお金持ちをめざすわけではない。共に生きそこそこ幸せだといえる社会、日本の良さはちょっと社会主義的なところだったと思う」(シンクタンク・ソフィアバンク・藤沢久義副代表)。
個性尊重と無関心に育まれた未来を支えるべき子供たち
団塊の世代は、「子供には個性があるのだから、個性に合わせた教育をすべき」という“常識”で育った。その結果、自らは自分の子供にほとんど干渉しない親になった。型にはめたような教え方をすると「封建的」と批判される風潮の中で、日本社会は多くのものを生み出したが、同時に計り知れないほど「激変」したものも生み出した。日本人が本来もっていた日常生活の良さなど、多くの素晴らしい価値観や美意識も次々と失った。 「個性尊重・個性輝く」、「無理はさせない」、「人それぞれだ。いろいろあっていい」、「小遣い稼ぎの少女売春(援助交際)、何でもアリ。本人の自由」等々。 急増する少年非行を取り上げた平成17年版・犯罪白書の「少年非行特集」は、子供の教育を見直すための基礎データの一つとして注目されている。非行少年のうち、「処遇困難な非行少年が増えた」72%、「感覚、感情で物事を判断」60%、「(ワルをしても)多少のことは許してもらえる」54%。 一方、親たちは「子供の行動への責任感なし」62%、「子供のいいなり」50%、「子供の行動に無関心」49%が上位を占めている。 非行少年を更生させるためには、@人の痛みがわかる処遇、A集団の中での処遇、B保護者の自発的対応を促す働きかけ・・・の3点を重点にした処遇を提言している(05年11月9日産経新聞)。さらに非行少年らの心に深くかかわって見えてくるものは、「自分は愛されている」という確信が持てる生活を5才までのうちに体験していない子供が多いという・・・。 そして、心の底から求めていたものは、「自分が何かしら認められている」、「家の台所で作った手料理を食べていた」、「抱いてもらったこと」、「親と夢や希望について話した」等々がほとんどない子供が多いのだという。思わず胸をつかれ、急に涙がこみ上げてきた。この国の将来の人的、精神的強度を考えずにはいられない。
求められるたくましき外交力
小泉首相の靖国神社参拝問題などで日中関係の悪化が続行する一方、「日本は一体どういう国なんだろう」との疑問から、日本関連書籍の出版が中国・北京を中心に増えているという。特に米国の女性人類学者ルース・ベネディクトによる日本人論の名著「菊と刀」の新訳本はすでに2冊出版され、ロングセラーとなって上々の売れ行きとか・・・。新渡戸稲造の「武士道」も売れているという。 「菊と刀」(1946年出版)には、日本社会の階層や構造、「恩」「義理」「恥」など日本人の精神生活と文化、行動や考え方の構造的な分析が書かれている。 「国際摩擦―大国日本の世渡り学」(東洋経済新報社刊)で、国際政治学者の故・高坂正尭氏は、「外交の歴史を見ていて不思議なことの一つは、大切な時になると何かしら敵が増えてしまう国と、敵より味方の方が多くなってしまう国とがある」として、後者にイギリスを挙げている。 強さの秘訣はその国のかたちと外交能力・・・。最後まで妥協の可能性を追求する姿勢と、失敗しても逆境に耐えて戦い抜くだけの芯の強さが組み合わさった外交能力が強く求められているという。古来から「和」を尊しとしてきた日本国の、これからの外交の行方やいかに?!
覚悟が問われるこの国の行方
今現在の日本国の財政を「家計」に例えると、月給40万円の世帯が15万円のローンを払い、生活費に39万円、田舎への仕送りに13万円を使った結果、毎月27万円の借金が増え、ローン残高は5,300万円に達してしまった・・・という状態! 国内人口の自然減はすでに始まった。団塊世代の大量退職、高齢化による財政負担が現実になる。国家としての強度不足に備えはあるのか・・・。まさにニッポンの覚悟が問われている(日経ビジネス06年1月9日号より)。これら財政改革だけを考えても、官や民のあり方と共に、政治家、特に国のリーダーには政治生命を絶つくらいの覚悟が求められている。さらには、子や孫へ何を伝え残していくのか。世界の中の「日本国」をどう位置づけようとしていくのか・・・。
「進歩のない者は決して勝たない。負けて目覚めることが最上の道だ。日本は進歩ということを軽んじ過ぎた。私的な潔癖や徳義にこだわって真の進歩を忘れていた。敗れて目覚める。それ以外にどうして日本は救われるか。今、目覚めずして、いつ救われるか。俺たちはその先導になるのだ。日本の新生にさきがけて散る。まさに本望じゃないか」 昭和20年4月7日、戦艦大和と運命を共にした臼淵盤大尉(21才)の言葉に、我々は応えてきただろうか。自分自身の人生や家族のこと、国のあり方を改めて見直し、私たちの大切なふるさと日本国の進むべき“道”を問い直してみようではないか。
今年、地球環境平和財団は活動開始から17年目を迎える。これからも地球環境と国際平和を守っていく象徴として、地球の心象・鎮守の森「日本国」づくりの一端を担っていきたいと思う。■
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